【空】

「うわぁ!」

ぬらりひょんに刀で弾き返され、俺は木に叩き付けられる。

「くっ……そ、予想以上の力だ……」

『おいおい、もうこんなところで終わりなのか?』

ぬらりひょんは、余裕そうな表情で俺を見下ろして来る。

「いや、まだまだだ!こんなところで、お前を逃がすわけにはいかないからな」

と言っても、俺の体は限界に近づきつつあった。

『でも、悪いがここまでだ』

「何言ってやがる!」

すると、ぬらりひょんの姿は少しずつ薄れ始めていた。

「なっ!まさか、お前は!」

『気づくのが遅かったな』

このぬらりひょんは、ただの分身?!

「何でわざわざ分身を作る必要がある!何が狙いだ!!」

『そんなこと、言わなくてもお前なら分かるはずだ』

ぬらりひょんの言葉を聞いて、俺は中で一つの答えが浮かび上がった。

だけど、俺はそれを認めるのが怖かった。

『早く戻ることだな、でないとお前の愛しい女は死ぬぞ』

「ぬらりひょん……、お前!!!」

『あの女は、まだ隠された力がある。先に始末しておかないと、後々厄介だからな』

その言葉を最後に、ぬらりひょんは姿を消した。

「凛音に、隠された力だと?」

凛音には、今よりも凄い力を持っているのか?

それなら、なぜこのタイミングで凛音を殺そうとする。

他にも機会はたくさんあったはずだ。

俺は村雨をしまうと、体を庇いながら走り出す。

「凛音、死ぬなよ!」

今の俺は、凛音が死んでいないことだけしか願えない。

俺が行くまで死なないでくれ!