『ぬ、ぬらりひょん様?』

そこには、さっきまで居なかったはずのぬらりひょんが立っていた。

『これから面白くなると思っていたが、もう十分お前の力を見させてもらった』

私の力を見させてもらった?

ということは、ぬらりひょんは私たちの戦いをずっと見ていた?

じゃぁ、霧の中に消えたぬらりひょんは?

「あなたは、空が追いかけたはず。何でここにいるの?!」

『あぁ、あいつは俺の分身と戦っている。本物は俺さ』

十二天将たちは、私の近くまで来るとそれぞれ構える。

『ぬ、ぬらりひょん様、申し訳ございません。俺の力不足で……』

ぬらりひょんは、後ろにいる鬼蜘蛛に目を向ける。

その目は、一瞬だけ冷酷は瞳を見せたが、すぐにいつもの目へと戻った。

『仕方がないことだ、十二天将が三人相手ではお前に勝ち目はない。だから見ていろ』

ぬらりひょんは刀を抜くと、一瞬にして姿を消す。

「消えた?!」

いや違う、ぬらりひょんの動く速さが他の妖たちと違うんだ。

「おい!凛音様を守れ!」

六合の言葉で、みんなは私を囲もうとする。

だがその時──。

『遅いなぁ』

私のすぐ背後に、刀を構えるぬらりひょんが立っていた。