【空】

気配を探りながら、俺はぬらりひょんを追いかけていた。

「どこに行った?」

一度立ち止まり、意識を集中させ気配を探る。

しかし、気配を探ろうとしてもぬらりひょんの気配は感じられない。

「霧のせいか、うまく気配を感じ取れないのか?」

どうやら、この霧は普通の霧とは違うようだ。

結界みたいな感じで、自分の気配や足取りを探られないように隠しているような。

そんか感じがする。

「凛音のところは大丈夫だと思う。十二天将が五人も付いているんだ。それに、騰蛇も居るしな」

『よぉ、こんなところで何してんだ?』

「っ!」

俺は、声のする方へと見上げる。

(いつの間に!?)

『お前、あの女の近くに居なくていいのか?流石にあの女だけで鬼蜘蛛退治なんて無理だぞ』

「凛音を甘く見るな、凛音は俺と同じくらい強い。俺が居なくても大丈夫だ」

村雨を構え、俺はぬらりひょんに斬りかかる。

『おっと、危ねえ。大した自信だな。そんなにあの女を信頼しているのか?』

ぬらりひょんは、後ろへ一回転し地面に着地する。

「あぁ、俺は誰よりもあいつを信頼している。あいつもそうだ。誰よりも俺を信頼してくれる」

俺は、ぬらりひょんに向かって村雨を突き出す。

『少しは楽しくさせてくれよ』

ぬらりひょんも刀を抜くと構える。

「お前を楽しくさせられる時間はねぇよ!」

俺は一枚の符を取り出し、五芒星が書かれた符を村雨に貼り付ける。

「だから、すぐに楽にしてやるよ」

『晴明が作った符か、だから晴明とお前は嫌いなんだ』

数秒間の沈黙の間、俺たちは同時に動き出し刀を交える。