【凛音】

「んっ……」

目を覚ますと、すぐ近くに空の寝顔があった。

昨日の夜の出来事を思い出して、頬が熱くなるのを感じる。

(空の寝顔って、子供みたいで可愛い)

私は、今でも夢だと思ってしまう。

空が私のことを好きだということが。

だけど、隣で寝ている空を見れば、夢じゃないんだって分かる。

私は、空の頬に軽く唇を落とし、散らばっている着物に手を伸ばした時、いきなり手首を引っ張られた。

「きゃぁ?!」

「寝込みを襲うとするなんて、いけないやつだな」

「そ、空?!起きてたの!」

「お前の接吻で目が覚めた」

頬が一気に赤くなるの。

「お、起こしたのはごめん」

「別に謝らなくていい、逆にお前の接吻で起きられて幸せだ」

「そ、そうか?」

「あぁ、お前から接吻してくるのは初めてだしな。昨日は、俺ばっかりお前にしてたからな」

空は、そう言うと私に接吻をしてくる。

「も、もう朝だから駄目だ!」

私は、空の顔を押し返す。

「それに、今日は鬼退治だぞ!」

「分かってるさ」

空は布団から出ると着物に着替え始める。

「俺は、湯に浸かってくる。お前はそれまでに着替えておけよ」

「分かった」

空は、そう言い部屋から出ていった。

「はぁ……」

私も着替えなくちゃ。

すぐ傍に落ちている着物を拾い上げる。

「姉様に渡すはずの着物が……」

これでは、渡せないなぁ。

昨日の夜のことを思い出した私は考える。

空は、私のことを好きだと言ってくれた。

だけど、あいつは祝言をあげる。

だから、空が好きという気持ちはいつか消さなければならない。