家の大きな門をくぐって、外に出た時、隣の家から出てきた人物を見て、私は足を止めた。

「なんだ、今日は早いんだな」

「いいでしょ別に、日直なんだから」

「いつもなら、寝坊して慌ててるからな」

「一言余計なんだけど!」

隣の家から出てきたのは、安倍凛空(あべりく)という私の幼馴染だ。

凛空は、安倍晴明の子孫で、次の安倍の後継ぎだ。

「凛空だって、早いじゃん?」

「生徒会の仕事が残ってるんだ」

凛空も私と同じで、陰陽師を目指している。

どっちの方が強いかは分からないけど、絶対凛空だけには負けたくない。

「それは大変ですね、月の森中学校の生徒会長さんは」

凛空は、月の森中学校の生徒会長であり、私より二つ年上の男の子だ。

「“生徒会長”だからな、仕方がないことだ」

『生徒会長』という部分を、強調してくるのはムカつく。

「そうだ。凛空は、残りの十二天将の人たちがどうしてるか知ってる?」

「はっ?」

十二天将の人たちの中では、安倍の人と契約をしていた者もいた。

だから、蘆屋を出て行った十二天将の人たちは、もしかしたら安倍にいるかもしれない。

「残りの十二天将なら、俺の家にいるけど」

「やっぱり……」

「まあ、当然の判断だな。お前みたいなちびに仕えるなんて、俺でも嫌だし」

「ちびって言うな!」

絶対に凛空から、十二天将の人たちを取り戻して見せるんだから!