輪廻転生 絆が繋ぐ運命の転生 上

【空】

「遅い……」

あいつが明るいうちに外に着物を買いに行ってからというもの、もう夜になっている。

それに、外は激しく雨が降っているところだ。

「何処かで雨宿りしているのか?」

だから番傘持ってけって言ったんだ。

あいつは、俺の言葉を一つも聞こうとしない。

昔からそうだ。

あいつに勝手にライバル視されるようになってから、あいつに関わるのはめんどくさいと思っていた。

だが、他の女たちと違ってあいつは面白かった。

いろんな表情を俺に見せてくれるし、俺を変な目で見てこない。

唯一あいつの前では、いつもの自分でいることが出来た。

でも、一つだけまだあいつの表情で見ていないものがある。

それは、あいつが女になった時の顔だ。

好きなやつが居れば、そんな顔するんだとは思うけど、あいつの様子を見ている限りだと好きなやつは居なさそうだ。

あとは、あいつが女らしい姿だ。

水干ばかり来ているせいか、あいつの着物姿を見たことがない。

ちょっと気にはなるが、あいつの姉様が着物を買ってこいって言ったのも、姉様の計らいだろう。

もっと女らしく着物でも着なさいというな。