貴船近くの町まで来たところで、私たちは宿に入った。

「今夜は、一雨来そうだな」

「何故わかる?」

「星がそう言っている」

晴明様と同じことをするんだな。

こいつは、もう立派な陰陽師だ。

私と違って──

「ちょっと外に出てくる」

「どこか行くのか?」

「着物を見に行くだけだ」

「なんで着物?」

何でこんなに色々と質問してくるんだ。

私がどこに何をしに行こうが空には関係のないことなのに。

「姉様が祝言に着る着物を選びに行くんだ」

「そういえば、お前の姉様も祝言あげるんだっけ?」

私みたいに力のない姉様は、貴族の方の嫁になる。

好きでもない男の嫁になるなんて、私には考えられないことだが……。

「一雨来そうだから、番傘持ってけよ」

「別に大丈夫だ。それまでには戻るつもりだ」

空の言葉を聞かず、私は空を置いて宿の外へと出た。

「たく……。あいつは女って自覚はねぇのかよ?」