「あっそ、それは良かったですね。行くぞ騰蛇」

「はいはい……」

「なんだよ、一緒に行かないのか?」

「行くわけないでしょ」

「いいだろ別に、どうせ行く方向同じなんだし」

空はそんなことを言いながら私たちに着いて来る。

「私になんか構ってる暇ないんじゃないの?噂によれば、あんた近々嫁もらうんでしょ?」

そう、こいつは十九歳という若さで嫁をもらう予定なんだ。

「よく知ってるな、誰から聞いたんだ?」

「誰でもいいだろ」

このことを聞いたのは、空の妹の友江(ともえ)からだ。

何故か知らないが私に教えてきたのだ。

「それを聞いて、俺が他の女といるのをその嫁さんに見られると困るってことを心配してるのか」

「そういうことだ」

別に、こいつが他の奴と祝言をあげるなんて、私にはどうでもいいことだ。

「そうかぁ。お前も昔に比べれば女らしくなったし、いい婿でも貰えるんじゃないのか?」

「そんな話し、ずっと先の話だ」

私は恋というものを知らなかった。

好きになるやつも居なかったからな。

だが、今回の事件で私たちの関係を変えてしまうのに、私たちは知る由もない。