「お前は、何度も輪廻転生を繰り返していたというのに、表に出てきたのはこれが初めてだな」

「そうだな。これまでの体は、私の魂と完全に一つにならなかった。だが、今回は違う」

「凛の体と一つになるのか?」

「そうか……。この体の持ち主は、凛というのか」

「あぁ、薫子がそう名付けた」

私は、初めて騰蛇から女の名前が出たのに驚いた。

まさか、騰蛇はその女に恋をしたのか?

「お前にとって、その薫子は大切な存在だったんだな」

「とても、大切な存在だった。凛音が死んでから、俺は何人もの主に従ってきた。だが、どの主も俺の力に恐れ、酷い扱いをされた」

騰蛇は、どれほど傷ついたのだろうか。

私がお前を十二天将にしてしまってから、何度傷ついたのだろうか。

「だが、薫子は違った。あいつは、お前みたいに俺に頼ってくれた。俺を友と呼んでくれた。だけど、守れなかった!」

騰蛇は拳に力を入れると、頬に涙をつたらせた。

「もっと傍に居たかった、けど守れなかった……。俺は、それが悔しい!」

「お前の苦しみは、よくわかる」

私は、あの時ちゃんとみんなを守れただろうか?

「俺がこんな弱音を吐けるのは、唯一お前だけだ」

「そうか。昔に比べると、素直にはなったな」

「何百年も経てば、俺だって変わるさ」

何百年も経てば、誰でも変われるのか?

なら、何百年経っても変わらない私は何なのだ?