☆ ☆ ☆
翌日の朝、目を覚めした私は、台所に行き朝食の準備を始める。
「なんだ、もう起きてたのか?」
「おはようお兄ちゃん、ご飯できるまでもう少し待ってて」
「言われなくても、そうするつもり」
お兄ちゃんはそう言うと、近くにあった新聞を手に取ると読み始めた。
私の五歳年上のお兄ちゃんの潤(じゅん)は、ただの普通の高校生。
私と違って、妖の存在を見ることや、気配を探ることはできない。
お父さんが普通の人だから、お兄ちゃんはそのお父さんの血を、まんま受け継いでいる。
だから、蘆屋は私が継ぐことになっている。
「昨日も、帰ってくるの遅かったな」
「別にいいでしょ、お兄ちゃんには関係のないことなんだから」
「可愛くない妹だな、俺が心配してるのが分からないのか?」
「心配しているようには、見えないけど」
「またそう言う……」
「本当のことでしょ?」
お兄ちゃんと会話をしながら、てきぱきと朝食の準備をこなしいていく。
「お兄ちゃん、お父さん起こしてきてよ」
「はいはい」
私が『様』付けして呼ぶのは、お母様だけだった。
自分でも、何でお母様だけ様付けしていたのかは覚えていない。
「おはよう、凛」
「おはようお父さん、朝食ここに用意しといたから、お兄ちゃんと食べてね」
「今日は早いな、どこか寄るのか?」
「今日は、日直の日」
制服に着替えるため、私は自分の部屋へと戻る。
「凛も大きくなったなあ」
「そうだな。昔なんて、母さんの後ろばっかり着いてた、ただの泣き虫だったのに」
「薫子が亡くなって、一番苦労したのはあの子だからね」
「お父さんお兄ちゃん、行ってきます」
「行ってらっしゃい」



