男の人は、左右に首を振ると掴んでいた手を離した。

「この先に行ってはいけないってこと?」

男の人は軽く頷く。

(よく見ると、この人凛空に似ている)

男の人は優しく微笑むと、私の額に指先を軽く押し当てる。

「えっ?」

何かが伝わってくる、暖かくて優しい何かが──

指先を離した男の人は、口を開いて何かを言ったように見えた。

「今なんて?」

だけど、私の意識は限界に来ていて、私は目を閉じてその場に倒れ込んでしまった。

「まだ早いよ、ここに来るのは……凛音(りんね)」

男の人は、優しく私の頭を撫でてくれた。

「時は変わり始めている、もう少し頑張れよ凛。あいつがお前を助けてくれるからさ」

男の人は、空を見上げ歓声が聞こえるほうを睨みつける。

「今度こそ、終わらせてみせるさ」

辺りに霧が立ち込めてきて、男の人は姿を消した。