【凛空】

「凛!!」

『あれ?また、眠ちゃった』

黒い髪に金色の瞳を持つ男は、凛を見下ろしていた。

「お前は、誰なんだ?!」

『俺は、夜(よる)ぬらりひょんの息子さ』

「ぬらりひょんの息子だと?!」

『あぁ、今日来たのは凛を殺すためだったけど、気が変わったよ』

「なんだと?」

夜は、近くの窓を開け足をかける。

『面白いもん見れたからさ、凛と戦うのはもう少し観察してからだ。それまで、強くなってよ』

夜は、最後にそう言い夜の街の中へと消えていった。

「ぬらりひょんの息子……」

俺は、腕の中で眠る凛を見つめる。

「まさか、力が発動するなんて……」

俺は、優しく凛の頬に手を当てる。

「ごめんな、凛……」

力は発動したが、印は壊れてはなさそうだ。

きっと、一時的な発動だったんだろう。

この印は、凛の気持ちと心の揺らぎで解ける。

もし凛が我を忘れて、力に呑まれたら……。

「それに、あの人は……」

凛とは違った口調、違う雰囲気を持っていた。

「あれが、凛の前世の人物の魂なのか……?」

凛には記憶がなくても、魂には記憶がある。

いつか、その記憶が凛のものになるのか?

記憶を取り戻した凛は、凛のままなのか?

俺の中で不安が募っていった。