この学校には、校舎が二つある。

一つは、昔に使われていた旧校舎で、二つ目は、七年前にできたばかりの新校舎。

普通妖は、旧校舎に多くいるイメージがあると思うけど、なぜかここは、旧校舎より、新校舎の方が妖が多い。

それも、力が強い妖ばかりだ。

昼間はなにも活動せず、夜の深夜一時から四時にかけて行動をする妖は、人が目にすることは滅多にない。

しかし、見える人には見えるらしく、こうして妖退治の依頼が私のところにやってくる。

しかし、その依頼のほとんどは、嘘の物が多くて、少し困っているところもあったりする。

「本当に、鬼なんているのかな?」

手紙によれば、男の子が見たのは角が生えた生き物。

それは、鬼の妖と考えて間違いないと思う。

だけど、今この化学室からは、鬼の気配はいっさい感じ取れない。

「もしかして、他のところにいるのかも知れない」

日によって現れる妖は、違うことがある。

「これは、しばらく見張りをしないといけないかな?」

とりあえず、化学室から出て教室の扉を閉める。

今のところ、鬼の気配が感じられないなら、生徒たちに危害を加えることはないと思う。

「さてと、修行を始めますか」

そう結論を出した私は、スカートのポケットから。符が入った包みを取り出し、そこからある一枚の符を掴むと、呪文を唱え始める。

「我と契約せし十二天将よ、神聖なる領域より来たる、汝の力をその身にしゅくし、我の願いを聞き届けよ。汝は、水の力をいらす者なり。その力を以って、我の剣となりたまえ。十二天将の一人、青龍よ、我の前にその姿を、あらはしたまえ」

符に力を注ぎ、私の呼びかけに応えるように、符に刻まれた星の形を持ったセーマンが、青く輝くを放つ。

しかし、それは一瞬の出来事で、青い輝きはセーマンの上に集まると、弾け飛ぶように、消えてなくなってしまった。

「やっぱり、私の力じゃまだ駄目なのかな?」

お母様が亡くなって、もう七年が経たった。

あれから十二天将の人たちは、お母様が亡くなってからというもの、それぞれの道へ行くと言い、ほとんどの者たちが蘆屋から出て行った。

だけど、騰蛇と青龍と玄武(げんぶ)と六合(りくごう)は、蘆屋に残ってくれた。