一晩眠っていたからだろう。男性の黒髪は乱れ、あちこち跳ねてる。でも、それすら似合ってしまうほどカッコいい。日本人離れした整った顔立ちと、広い肩幅に開いたシャツから覗くのは引き締まった胸板。
ぼうっと眺めていると、彼の少しだけ青みがかった瞳とばっちり目が合い、慌てて視線を逸らす。
生まれて初めて、男性をあれだけ見ちゃったせいだろうか。少しだけ鼓動が速くて、胸に手のひらを当てた。
(そ、そうだ!ぼうっとしてる場合じゃない。熱、どうなったんだろう?)
「あの……き、気分はいかがですか?」
慌てて視線を戻して男性に訊いてみたけど、彼は何も答えずに私を見据えたまま微動だにしない。スーツのまま着替えさせてないから、しわしわのシャツは寝汗が染みてる。着替えさせた方がいいと思うけど。
(それより……なんで私を親の敵みたいに睨むの?話しかけずらいんですけど)
こちらは熱がある見知らぬ人を家に上げた上に、看病までしたんだから。お礼を言われることはあっても睨まれる覚えはないんですが。
いくらカッコいいイケメンでも、お金持ちでも。礼儀をわきまえない人は嫌いだ。
ムッときた私は、男性に負けじと彼を睨み付けた。
しばらくにらみ合いが続いたところで――突然、ガラス戸が開く。
「碧姉ちゃん、おせえよ。プリンまだ……」
空くんがこちらへ顔を覗かせる直前、私はガラス戸を閉じることに成功した。



