「ほら真吾、上の方を見てみろ。」


パパに肩車してもらって、目を凝らして上の方を見つめる。


…カブトムシのくろい背中は、見つからなかった。


「やっぱり亮達が全部捕ってったみたいだな。一匹ぐらいくれても良さそうなものを。」


「孝明君の息子からカブトムシを貰っても、真吾は喜ばなかったさ。さ、そろそろ帰るか。カブトムシ捕れなくて、ごめんな真吾。」


帰るときにもう一度木の上を見てみたけど、やっぱりカブトムシはいなかった。


空の虫かごが、帰りのトラックの中はもっと軽く感じた…。