苺花の言葉を聞いた安達くんは、少し考える素振りをしてから、黙って歩き出した。
それを慌てて追うように苺花も歩き出す。
普通に歩く安達くんはすっごい早いはずなんだけど、時折後ろを横目で見ながら、ゆっくり歩いてくれるあたり、やっぱり優しい。
少し歩くと、人ごみの凄い通りに出た。
「市場?」
「みたいだな。」
お望みのところではないらしい。
でもここを通るみたいで、安達くんは、後ろを振り返り、苺花の手を取った。
「え・・・?」
急に引っ張られた手に、苺花は安達くんを見上げる。
「小さいからな、見失わねーよーにな」
照れ隠しなのか、そのあとすぐに目をそらされたけど。
その言葉は苺花の胸を、大きく動かした。
「うん!!!」
安達くんの大きな手を、ギュッと握り返す。
もう振り返ってはくれなかったけど、苺花は感じました。
安達くんが、ほんの少しだけ、
手を優しく握り返してくれたことを。



