「でも、とりあえずみんなにはバレないようにしなよ。噂ってどっちに転ぶかわかんないとこあるし。」
少し声を落として言ういおちゃんに、苺花は素直に頷いた。
「うん、分かってる。」
「分かってるならいいよ」
いおちゃんも苺花も、昔から噂されることが多かった。
悪影響な噂こそなかったものの、噂がどれだけ怖いかなんて、分かってて。
だから、噂だけに惑わされることはしないって決めてるんだ。
そしてそれは、きっといおちゃんも同じ。
「…で。元気がないのは安達透が関係するんでしょ。」
本当にいおちゃんには、なんでもばればれなんだよなぁー。
苺花は小さく苦笑して、頷いた。
「よくわかんないけど、怒らせちゃったみたいで。」
告白されたこと。
少し行くのが遅れたこと。
扉を開けてくれなかったこと。
……すごい剣幕で怒ったこと。
あの日のことを話すと、いおちゃんは微笑んだ。
「やっぱ、安達透、悪いやつじゃなさそうだね。」



