次の瞬間、ものすごい勢いの拳骨が安達くんを突き飛ばし、安達くんは勢いよく倒れ込んだ。
苺花は、驚いてその場で言葉を失う。
「…元気でな、透」
少しだけ、名残惜しそうに、先輩は呟いて、グラウンドを後にした。
「いってえ…」
呆然とその姿を見送っていると、足元から安達くんの声が聞こえる。
ハッと、あわてて振り返り安達くんに駆け寄る。
「安達くっ……」
安達くんは、少し微笑みながら、涙を流していた。
その涙が、痛みからくるものではないことくらい、苺花にも分かって、苺花は言葉を飲み込む。
安達くんの過去の世界でも良い出会いがあったんだと、内藤先輩との出会いも、安達くんには必要だったのだと、そう感じた。
そして、その世界を捨てる、大きな覚悟をして、今、安達くんはここにいる。
苺花が引き止めたから、ここにいるんだ。
「…安達くん、大丈夫だよ。
苺花が、絶対に幸せにするよ。
この世界も楽しいって思わせるから。」
しゃがんで、そう伝えると、安達くんの手が伸びてきて、勢いよく抱きしめられた。
少し震える安達くんに応えるように、苺花もぎゅーっと力を強める。
少し力が緩んで身体が離れると、
そのままそっと唇が重なった。
優しい優しいそのキスは、血の味と涙の味がした。
「…っ」
気付けば涙を零していた苺花。
安達くんは、驚いたようにくしゃっと笑い、
苺花の頭を撫でてくれた。



