「斗真……っ!」

小さな歩幅で、走ってくる。巻いた茶色の髪の毛がフワリと揺れる。

ギュッと、抱き付かれると微かに薔薇の香りがした。

怖い、怖い。手が震える。

「み、か。なんで……。」

彼女の名前を口にする。彼女は、小さな口を三日月にさせて言った。

「斗真は、私のものなの。佐伯から、聞いたわ。貴方、私が居るのに、こんなゲームに参加していたのね。」

「や、めろ……っ!!」

俺は、彼女を強く押し、声を荒げる。ただ、怖い。

中島 美歌*なかのしま みか*。彼女は、俺の婚約者でもあり。

「やめろ?それは、こっちの台詞よ?」

俺を苦しめる存在。

「あ…っ、う……」

声が出ない、冷静になれない。言葉を選べ。

「ちょっと!あんた、誰なのよ!」

そう、聞こえたのは怒りを含んだ結愛ちゃんの声。

やめろ、やめろ。結愛ちゃん、近づいちゃ駄目だ。