「こ、こんばんは。」

「あ、こ、こんばんは。」



それから数日後、私は、またいつものようにファンタジー小説を買いに行った。



「……先日はどうも……」

「こ、こちらこそ……」

お互いがお互いの目を見られず、俯いたままのぎこちない会話が続いた。



「あの…良かったら、また、遊びに行きませんか?」

「は、はいっ!嬉しいです!」

「それじゃあ、今度の日曜日…テーマパークなんていかがですか?」

「楽しそうですね!」



照之さんからテーマパークだなんて少し意外な気がした。
ああいう騒がしい場所は、あんまり好きじゃないんじゃないかって勝手に思ってたから…



お互いに告白して、恋人同士になれたっていうのに、以前と少しも変わらない。
まるで、中学生みたいな初々しい恋……



私達は、当日の待ち合わせ時間などを早々に決めた。



「僕…先日いただいたカーディガンを着て行きますね。」

「じゃあ…私もあのストールを…」

言った後で急に照れくさくなってしまった。
ペアルックをしていきますっていうのと同じだもの…



「じゃ、じゃあ、日曜日に…」

「はい、楽しみにしてます。」



照れくさいけど、嫌な気分ではなかった。



それは、お互いに想いあってるっていうことがわかってるせいなのか…
これからもずっと愛を育んでいきたい。
今までと変わらない穏やかで静かな愛を……



そしてゆくゆくは…



鏡花堂に嫁いだ自分を想像して、頬が緩んだ。
馬鹿みたいだけど、三十路を過ぎたら、やっぱり結婚を意識しないわけにはいかない。
恋愛と結婚を切り離しては考えられない。



だけど、そんなことはまだ早いってこともわかってた。
私達は、まだお互いに気持ちを伝え合ったばかりだもの。
これから少しずつ歩んでいければ良い。
ゆっくりだけど、確実に…



(それが一番……)