(やった…渡せた……)



自分の部屋に入ると、緊張が解け、足の力が一気に抜けた。



その時…スマホの着信音が鳴った。
画面には隠岐照之の文字。
再び、全身に緊張が走った。



「は、はい、吉村です。」

「あ…あの隠岐です。」

「はい……」

「そ、その……あれ…本気にして良いんですか?」

「え?」

「ですから…その……」

いつも冷静な隠岐さんが、珍しく焦っているのが感じられた。



「は、はい。もちろんあれは本心です。」

「ほ、本当に?」

「本当です…わ、私……隠岐さんのことが好きです!」

言ってしまった…
ついに、本心を伝えてしまった。



「あ、ありがとう、吉村さん!
じゃあ、僕とお付き合いして下さいますか?」

「はい!もちろんです!」

「あ、ありがとう!!」



事は予想以上にあっさりと運んだ。
私は想いを伝えることが出来、そして、隠岐さんと付き合うことになった。
ついに、高い壁を乗り越えることが出来たんだ。



ほっとして…嬉しくて…
全身の力が抜けて、また涙がぽろぽろとこぼれてしまった。



隠岐さんを初めて見て…
一目ぼれして…
それから、いろんな誤解を重ねながらも、ずっと隠岐さんのことを想って…



そして、その想いがようやく実を結んだ。



これ以上のことがあるだろうか?



私の熱い涙は、なかなか止まることはなかった…