「先輩たちの、私たちの気持ちを……みんなに、伝えなくちゃダメだと、思う。声にしなくちゃ、ダメだと」


 間違った方法かもしれない。そんなの私にはわからない。
 でも、この方法以外に今、選べるものが私には見当たらない。


「……私は、自分のむしゃくしゃした気持ちを晴らすために、反乱軍っていう響きに惹かれただけで参加したと、思う」


 いじめは嫌いだ。だけど、いじめをなくそうなんてことは、思ってなかった。
 私の目に見えるところにあるのが、嫌だっただけだ。

 ただ、思うように行動できないまま、ぬくぬくと過ごしている自分をどうにかしたかった。

 人任せに、どうにかなればいいなと思っていた。
 
 なにかが変わるんじゃないかって漠然と思ってた。
 変わるなにかを考えもせずに。


「自分の中で答えを出したって、納得出来ない」


 逃げた自分を叱咤したかった。
 自分で選んだ道なのに。

 全てを諦めて、人に迷惑をかけないように過ごしていたことを後悔しているわけじゃない。でも、心のなかに残ってるしこりを、どうにかしたかった。


「伝わらなくてもいいから、伝えることをしなくちゃ、いけないんだと、思う」


 私はそれを、放棄していたんだ。


「伝えなければ、ちゃんと耳を傾けなれば、自分も、相手も、変わらない。間違っているか正しいかも、わからないままなんだよ」

「……伝わらないかもしれないのに?」


 会長が私を見て言った。
 それに対して「それでも」と大和くんが言う。
 

「伝わらないかもしれないから伝えないなんて、今までしてきただろ。それがしこりになって、心に残るくらいなら、伝わらなくても吐き出すしかない」

「……うん」

「やるなら、俺もやってやるよ。ムカつく学校に言いたいことは山程あるしな。のうのうと笑ってる奴に文句言わせろ。この学校のくだらないシステムで、くだらない順位付けする生徒たちのせいで、俺は親友を、失ったんだ」

「オレも言ってやるよ。オレのことをなんもしらねーで過大評価するバカどもを笑ってやるよ」

「あたしだって言いたいことあるよー。彼氏に文句言いたいし、彼を笑う人にだって言いたことたっくさんあるんだからぁ」

「……わたしも、言います」


 浜岸先輩や蒔田先輩が賛同してくれてほっとしていると、柿本さんが珍しく声を発した。

 私の目をまっすぐに見つめる、柿本さんの瞳。
 彼女とこうしてちゃんと見つめ合うのは、初めてだ。