春町くんが保健室の外に追い出される様子を、私は放心しながらベットの中で見ていた。
心臓がまだバクバク言っている。
驚きの波は中々引いてくれない。
ドアをピシャリと閉めた先生は、
「まったく、高校生のくせに色気だけ身につけて、中身はちゃらんぽらんなんだから……」
そんなことを呟いて、私の側に戻ってきた。
「宗多さん、大丈夫だった?」
「はい……」
心臓が飛び出そうなくらいびっくりしたけど、キスは未遂で実害はない。
キスしてないんだから、大丈夫、
大丈夫なんだよ、私……。
自分の心にそう言い聞かせて、大きく深呼吸してから、「あ……」と気づいた。
「お礼……言いそびれちゃった……」
私の独り言を保健の先生が聞き返す。
「誰に? 何のお礼を?」
「あの……春町くんです。
私を保健室まで運んでくれたのに、まだお礼を言ってなくて……」


