パチッと目を開けて、カバッとベッドに身を起こすと、ベッドサイドにいた春町くんが「うわっ!」と驚きの声を上げた。
ベッド周囲はベージュのカーテンで仕切られていて、そのカーテンの切れ間から、保健の先生が電話の受話器を持ち上げている姿が見えた。
慌てて保健の先生を止めた。
「先生、待ってください! 私、大丈夫です!
あの、救急車はいらないので電話はちょっと……」
床にぶつけた後頭部がズキズキするからタンコブは出来ていると思うけど、そのくらいで救急車なんて恥ずかしすぎる。
両親にも心配させてしまうし、大事にするのはやめて欲しい。
ベッドサイドには担任の猪熊先生もいて、
「宗多、本当に大丈夫か?」と心配そうに顔を覗き込んできた。
保健の先生は受話器を戻し、私の側にやってくる。
「気分は?」
「大丈夫です」
「吐き気やめまい、手足の痺れは?」
「ありません。どこもおかしい所はないんです。
勝手に倒れてびっくりさせてごめんなさい。
本当に私は大丈夫ですので、救急車も病院もいらないです。お願いします」


