懐かしいふくろう子供図書館の風景が揺らいで、また記憶の奥底へと潜っていこうとしていた。
青色の本も麦わら帽子も、【菜乃花、またね】と書かれたメモ用紙も、ぼやけてあやふやな形状となり、何も見えなくなる。
それと同時に、耳にザワザワした周囲の物音と話し声が戻ってきた。
「先生、宗多の様子はどうですか?」
「うーん、脈拍も呼吸も血圧も正常で、脳にダメージはないと思うのよね。
たぶん、軽い脳震とう。すぐに目覚めるとは思うけど……。
念のため、救急車呼びますか。猪熊先生、いいですか?」
「はい……あっ、コラッ! 春町は来るんじゃない。
女子が寝ているベッドに男子は近づくな」
「え〜先生だって男じゃん。固いこと言わないでここに居させてよ〜。
菜乃花ちゃんの心配してるんだよ〜」
春町くんの声が、すぐ近くにした。
他には担任の猪熊先生と、保健の女の先生かな?
私、どうしたんだっけ?
あ……そっか。
バレーボールの強烈スパイクを顔面で受け止めちゃって、倒れて頭を打ったんだ。
そしてここはきっと保健室で……え……ええっ⁉︎
今、先生達、救急車って言った⁉︎


