明日はきっと晴れるから




友達は欲しいけど、本ばかり読んでいたい。

そう思う私にとって、目の前にいる女の子は最高の友達候補に見えた。


いつもはおとなしい私だけど、嬉しくなって積極的に話しかけた。



「すごいね!いろんな本を読んでいるんだね!
あのね、私、菜乃花。あなたのお名前は?友達になろ?」


「菜乃花……可愛い名前だね。
私は……ゆうき……」


「ゆき? わぁ!この青い本、“空色のゆきちゃん” と同じ名前だね!」


「あ……うん……」


「ね、ゆきちゃん。
あっちのテーブルで一緒に本を読もうよ!」



笑わない不思議な女の子のゆきちゃんと、同じテーブルで並んで椅子に座り、静かに本を読む。



窓から差し込む夏の強い日差しを白いカーテンが柔らかな光に変えて、開いた本の上に届けてくれる。


インクと紙とお日さまの香りに包まれて、私の意識はすぐに物語の世界に入り込んだ。


本に夢中になると周りが見えなくなる私。


4つの章を読み終えた2時間半後、ふと顔を上げて隣を見ると、ゆきちゃんがいなかった。


ゆきちゃんが座っていた椅子には私の麦わら帽子が逆さまになって置いてあり、帽子の中にメモ用紙が。


【菜乃花、またね】と綺麗な文字で書かれていたーーーー。