結城くんと夢中で話している途中で、午後の授業開始5分前のチャイムが鳴り響いた。
「えっ、もう?」
あっという間に時間が過ぎたことに驚いて、そんな言葉が口をついて出てしまった。
結城くんはもたれていた壁から背を離し、「ちょっと待っていて」と言うと、
一旦教室に入って行った。
すぐに廊下に戻ってきた彼の手には、新しい文庫本2冊が握られている。
「これ、宗多さんにいいんじゃないかと思って、家から持ってきておいたんだ。
読んだことある?」
「ううん、ないけど……」
それは、上下巻の歴史小説。
今まで歴史というジャンルの物語は、読んだことがなかった。
「明治時代のお話?」
「時代背景は、明治後期から大正にかけて。
少し難しいけど、宗多さんの読解力なら大丈夫だよ。
恋愛要素も入っているから、女の子は楽しく読めると思う。
歴史の勉強にもなるし、いい本だよ」
日本史は、苦手な教科だった。
近代史は特にゴチャゴチャ複雑で、教科書を開くと憂鬱な気分になる。
だから今まで歴史小説は避けていたんだけど、結城くんの言葉に納得してた。
そっか。楽しく読めて勉強にもなるんだね。
そんなこと、思いつきもしなかったよ。
今まで避けてきたことが、もったいなかったかも。


