それからふたりで、彼のクラス前の廊下で立ち話をした。
窓から午後の日差しが降り注いで、温かい。
廊下の壁にもたれて並んで話をする私達に、時折通りかかる特進クラスの生徒達が訝しげな視線を向ける。
その度に私は自分の髪に触れて、このエリアに相応しくない容姿を気にしてしまうけど、
結城くんは全く気にしていない様子で、私と会話してくれる。
「俺は第3章に入るまで、犯人が目撃者の谷川だと思っていたんだよ。
この人の証言を嘘だと仮定してら、すべての矛盾がなくなるからね。
でも違った。真犯人に、してやられたと思った。
宗多さんは? どんな風にこの本を読んだ?」
「あ、あのね、私は自分で推理とかできなくて、主人公と同じ気持ちで読んじゃうから、いつも最後はびっくりしちゃって……。
この本もね、主人公が……」
貸してもらった『町角ベーカリー 小麦堂3』についてお互いに感じたことを語り合う内に、楽しくなって、周囲の視線を自然と忘れていた。
結城くんて、不思議な人……。
前に中庭で厳しいことを言われたから、ここにくるのが嫌だと思ったのに、
こうして本の話をしていると、楽しくて心地よくて、ずっとずっとこうして隣で語り合っていたくなる。


