3日後は日曜日。
居場所が父親に割れて、きっと仕事休みの日曜日に乗り込まれると考えて、母は土曜に引っ越すと決めたのだろう。
私を『真臣』と呼んで、女の格好を今すぐ辞めさせろと、父親は母親に怒鳴る。
母親は半狂乱で『この子はさーやよ!』と、泣き叫ぶ。
母親の側にいないといけない気がしていた。
母の言うことに従わないといけない気がしていた。
そうしないと母親が壊れてしまうし、なにより疑問も不満も感じないほどに、私には自分というものがわからなかったから。
この前、菜乃花が『私らしい私』という言葉を口にしていた。
その言葉が心に引っかかり、あれからずっと考え続けて、やっと気付いた。
自分というものを、私は持っていないことを。
自分らしさ、自分とはどんな人間か、自分はどうありたいのか。
同じ歳の正常な子供なら、何となくでも身につけているはずの『これが自分』というものが、私にはなかった。
空っぽの心に、姉の代わりという役目が貼られているだけ。


