明日はきっと晴れるから




◇◇◇


夏がもうすぐ終わる頃。

菜乃花と出会ってから約三週間。

毎日のように図書館で一緒に過ごし、同じ本を読み、たくさん話をした。



楽しかった。

楽しいという感情は、こういう気持ちのことを指すのだと、生まれて初めて実感していた。



仮住まいのウィークリーマンションと図書館は目と鼻の距離なので、母親も長時間の外出を許してくれる。


『必ず帰ってきてね。さーやがいないと、お母さんは死んじゃうよ』

そんな言葉を付けられはするけれど……。



朝8時。

いつものように私の身支度を嬉々として整える母親が、私の長い黒髪を撫で、口元だけに笑みを浮かべて言った。



「さーや、3日後に引っ越すからね。

次の所は近くに図書館はないけど、大きな本屋さんがあったわ。

本が大好きなさーやに、たくさん本を買ってあげるからね」



3日後に引越し……。

引越し自体は予想していたことだけど、心の中に嫌だという素直な感情が浮かんできた。


菜乃花の可愛らしい笑顔を思い出し、別れたくないと強く思ってしまう。