心臓がドクンと大きな音を立てていた。
菜乃花の言葉に、何かを気づきかけている自分がいた。
私と菜乃花には共通点がある。
毎日たくさんの本を読むことと、今まで友達がいなかったこと。
それは同じであるように見えて、中身は全然違っている。
私が本を読むのは、現実から逃げるため。
菜乃花が本を読むのは、純粋に楽しむため。
私に友達がいなかったのは、周囲に子供がいない環境のせい。
菜乃花に友達がいなかったのは、友達と遊ぶより本が読みたいから。
本を読むのが、何より楽しいから。
『これが私だから、このままでいいんだもん。
これが、私らしい私なんだもん……』
何だろう、この気持ち……。
『私らしい私』
その言葉に心が揺すぶられている。
今まで自分らしさなんて考えたことがなかったから、よくわからない。
でも、考えないといけないよと、心の中で何かが訴えているような気がしていた。
自分の考えの中に沈んでいると、菜乃花に「ね、ゆきちゃん?」と言われて、気持ちが戻ってきた。
「あ、ごめん。聞いていなかった。
もう一回お願い」
「今までは友達がいなかったけど、今はゆきちゃんとお友達だよって言ったんだよ。
ゆきちゃんと話すのはとっても楽しいよ!
本を読むのと同じくらいに。
これからもずっとずーっと、お友達でいてね?」
「あ……うん」
ニコニコしている菜乃花から、目をそらして俯いた。
昨日、母親に言われたんだ。
父親がまた、私達の居場所を探し始めてるって……。
4度目の引っ越しは、いつだろう?
せめて夏が終わるまでは、ここにいたい。
初めての友達、菜乃花と、もう少し一緒にいたいんだーーーー。


