私が書き終えると、菜乃花は驚いた顔をして、
「子犬が可哀想……」と、目を潤ませた。
こんなチープな作り話にも感情移入できてしまう菜乃花に、私も驚いた。
泣き出しそうな菜乃花に謝って、慌てて書き直そうとした。
「ごめん、もっと明るい話に……」
言いかけた言葉を遮り、菜乃花は「大丈夫!」と私の手からペンを取り上げ、続きを書き始めた。
【捨てられてひとりぼっちの子犬は、空を見上げました。
小鳥がたくさん飛んでいて、ピチチと鳴きあってとても楽しそうです。
子犬は思いました。「僕も空を飛びたい。そうすれば小鳥とお友達になれるし寂しくないよね」】
菜乃花はどう?と言いたげに、こっちを見ていた。
どうやら自信があるみたいだけど、私にはこの物語が不思議に感じてしまう。
犬が空を飛ぶのは無理だ。
仮に飛べたとしても、小鳥に逃げられる。
小鳥は小鳥としか群れないだろう。
空を飛んでもこの子犬は、また寂しい思いをするだけになる。
菜乃花を傷つけないように、それをやんわりと伝えたが……菜乃花はまた「大丈夫!」と言って続きを書いた。


