私が本を読む理由は、そうしていると楽だから。
本の世界に入れば、周囲を気にしなくて済む。
両親の喧嘩も泣き声も、小学校に通えないことも、姉の代わりにされていることも…… 一時的に意識の外に追い出すことができる。
私と同じで、本を読むことを日常としている菜乃花。
でも、彼女にとっての読書は、私と違うみたいだ。
本を読むのが嬉しそうで楽しそうで、ドキドキワクワク……そんな感情が隣からひしひしと伝わってきた。
本に集中できなくなった私は、本を読む菜乃花を黙って見ていた。
同じ本を読んでも、菜乃花はきっと私と違うことを感じていそう。
理屈では菜乃花にとっての読書とはドキドキワクワクするものだと理解できても、そんな感情を私は持ったことがないから、心ではわからない。
楽しそうに本を読む菜乃花を見ていると、不思議な気持ちがしてならなかった。
自分の本に集中できないまま、2時間が経過した。
壁掛け時計は、11時半を示している。
母親のことが、心配になってきた。
父親から電話があった日は、ほぼ一日中、泣いたりわめいたり怒ったり、母親の感情は大きく乱れる。


