その日の放課後。
机の中の物をカバンに詰めて帰り支度をしていると、机の上に白とピンクの可愛らしいショルダーバックがどさりと置かれた。
学生鞄には見えないオシャレバッグは小さめで、勉強道具の全ては入らないように見える。
このバックの持ち主は、由希奈ちゃん。
視線を上げると、ミルクティー色したふんわりウェーブの髪を指に巻きつける由希奈ちゃんが言った。
「今日ヒマ? 暇でしょ?
みんなで街で遊ぶから、菜乃花も行こ?」
「あ、えっと……」
仲間に入れてもらった日から今日まで、放課後に3回寄り道したことがあった。
入るのに緊張してしまうようなギャル向けの洋服屋さんやカラオケ、ゲームセンターのプリクラ。
全てが初体験でドキドキした。
新鮮さと、私には友達がいるんだと感じる喜び、とても楽しかったけど……正直言ってとても疲れる。
家に帰り着いた時、お母さんに「顔色が悪いよ?」と心配されてしまうほどに。
それはきっと、こういうことに慣れていないせい。
慣れるためには、みんなともっと遊んだ方がいいんだよね……。
そう思う気持ちと、行ったらきっとグッタリしちゃう。今日は宿題が3教科もあるし……そんなマイナス思考が心の中でせめぎ合う。


