『私、菜乃花。あなたのお名前は?友達になろ?』
そう言った私に確か、あの女の子は……。
『私はゆ、き……』
そう言った気がする。
そっか。
あれは、私の聞き間違いだったんだ。
女の子は『ゆうき』と名字を名乗ったのに、私は下の名前だと勘違いして、『ゆきちゃん』だと思い込んでしまったんだ。
今の彼は、どう見ても男の子。
綺麗な顔立ちをしていても、決して女の子には見えない。
あの時、女の子の格好をしていたのには、きっと深い訳があるんだろう。
それを知りたいけど、今は聞かないよ。
結城くんが私をどこに連れて行こうとしているのかは、何となくわかっている。
そこで話してくれるんでしょう?
私が忘れてしまった想い出と共に、全てを……。
繋いでいる手の平から、優しい温もりが伝わってくる。
それが疲れ切った私の心をそっと温め、癒してくれる。
さっきまで、絶望の淵にいたはずなのに不思議……。
結城くんの側にいるだけで、こんなに心が落ち着いていられる。


