逃げ出したくて走っていた。
無我夢中で駆けて、スーツ姿のサラリーマンに腕をぶつけてしまい、「気をつけろ!」と怒鳴られた。
怖いよ……逃げたいよ……。
あれ? 私……何から逃げたいの?
由希奈ちゃんから? それとも春町くんから?
違う……自分からだよ……。
私は、今の自分から逃げたいんだよ。
当たり前だけど、どんなに走っても私は自分から逃げることができなかった。
運動は元々苦手で普段走ったりしないので、呼吸も心臓も苦しくて、今にも倒れてしまいそう。
それでもいい……。
私は悪い人間なんだから。
私がいると、クラスの皆んなが嫌な想いをするよね。
お母さんだって私がいなかったらあんなに働かなくていいし、楽なはず。
結城くんは二度と私を好きにはならないし、頼ってばかりの私を、本当は迷惑に思っていたんじゃないかな。
苦しい……苦しいよ。
それでも走るから、このまま息が吸えなくなって呼吸が止まってくれないかな。
心臓が破れて、鼓動を止めてくれないかな。
私なんて、大嫌い……。
自分をやめてしまいたい……。
走っても走っても、自分からは逃げられないし、呼吸も心臓も苦しいだけで止まってくれなかった。
やがて辺りは見慣れた景色に変わり、そのまま自宅マンションにたどり着いてしまった。


