春町くんらしい自分本位な優しさに、ありがとうとは言えなかった。
「カラオケには行かないよ……」
それだけを口にすると、美緒ちゃんが呆れた顔で私を見ながら、春町くんに言った。
「ほらね。私の言った通りじゃん。
だからやめときなっていつも言ってんのに、楽人は女なら誰にでもいい顔したがるんだよね。
もう何があっても、菜乃花は無理だから。
いい加減にわかりなよ。
由希奈もなんとか言ってやんな?」
「うん! あたしも、菜乃花は嫌い〜」
「は? 由希奈、違うって。
私は別に、菜乃花を攻撃しろって言ってないから。
楽人のチャラ男っぷりにムカついて……」
「えー? 美緒って楽人のこと嫌いなの?
あたしは楽しーから好きだよ。
菜乃花は嫌い。ダサいしー、なんか暗いしー。
うちのママ言ってたよ。菜乃花のパパって殺人犯なんでしょ?
じゃあ菜乃花は殺人犯の娘だよね。ちょー無理」
殺人犯の娘……。
「由希奈っ!」
「ちょ、マズイって!」
美緒ちゃんと春町くんが焦った顔をして由希奈ちゃんの口を塞いでいるけど、その言葉はしっかりと私の脳裏に刻み込まれてしまった。


