小さな声で「ごめんなさい」と謝り、それから床に落ちた物を拾った。
それは紙パックのコーヒー牛乳で、ぶつかった拍子に男子が落としたもの。
きっと今、学校の自動販売機で買って、戻ってきたところだったのだろう。
幸い中身は漏れたりしていなかった。
コーヒー牛乳を渡して、私は後ろのドアから出て行こうとした。
一歩二歩、廊下に足を踏み出したところでなんとなく気になって、肩越しに振り向いた。
直後に聞いたのはゴトンという物音で、振り向いてしまったことを後悔した。
私が拾って渡したコーヒー牛乳を、その男子がゴミ箱に捨てていた。
それを見た他の男子が驚いていた。
「え? 捨てんの?
中、入ってんのになんで?」
「こんなの飲めるかよ。
不幸が移るかもしんないじゃん」
「お前、ひでーな」
酷いと言ってくれた男子も、ケタケタ笑っていた。
私は走ってその場から逃げ出した。
『不幸が移る……』
その言葉が、私の心の傷をえぐる。
痛い……痛いよ……。
結城くんに、早く会って傷を癒したい……。


