明日はきっと晴れるから




◇◇◇


お父さんとお母さんが離婚して、数日が経った。

私はもう、宗多菜乃花じゃない……。



今は学校。
4時間目の現代国語の時間。

現国の先生は必ず生徒を指名して、教科書を読ませる。


白いチョークを持った指先を生徒の間にさまよわせてから、先生は言った。



「次、58ページを宗多……ああ、すまん。
宗多じゃないんだな。岸谷、読んでくれ」



私の新しい名前は、岸谷菜乃花。

離婚したことでお母さんは旧姓に戻ることを選択し、私の戸籍も岸谷に変わった。


小さな子供じゃないから理屈はわかっているし、納得もしている。

でも……心がついていけない。


生まれてから17年間ずっと“ 宗多” だったのに、
“ 岸谷 ”と呼ばれても自分のことじゃないみたいに感じてしまう。



そんな複雑な心を隠して、立ち上がって教科書を読み始めた。



「茶の間の障子は開け放たれ、縁側と小さな庭へと続いていた。
北向きのこの庭は日当たりが悪い。真夏になり、ようやく緑が生き生きとーーーー」



今までの私は、現国の授業が好きだった。

だって、物語を読めるから。


勉強という意識を感じずにいられるこの時間が楽しくて、現国の授業だけはいつも時間がたつのが早かった。