お父さんが家族じゃなくなるなんて嫌だけど……嫌だなんて、口に出せなかった。
私がお父さんのためにしてあげられることがあるとするなら、「わかったよ」と言ってあげることだけ。
口を開くと涙を我慢することができなくなりそうなので、ゆっくりと頷いてみせた。
お母さんは前もってお父さんから話を聞いていたみたいで、辛そうだけどショックは受けていないみたい。
テーブルの上で私の手を握りながら、不安を取り除こうとしてくれる。
「菜乃花、大丈夫だからね。
お母さんね、小さな会社の事務の仕事を見つけたの。
来週から働きに出て、3ヶ月働いたら正社員にもしてくれるって。
生活も学費も心配いらないよ。
住む家も変わらないし、学校もそのまま。
菜乃花に負担はかけないから、大丈夫」
今まで専業主婦だったお母さんが、生活と学費のために働きに出てくれる。
パートじゃなくて、正社員。
私のために、大変な思いをして……。
それが申し訳ない気がして、思いついたことを呟いた。
「私……学校辞めて働こうかな……」
そうしたらお母さんは学費の心配をしなくて済むし、生活費の足しにもなる。
私は子供だけど、義務教育じゃない。
同じ歳で働いている人は、きっとたくさんいると思う。
私だけ『大丈夫よ』って言われて、守られているのが間違いな気持ちになっていた。


