離婚を決めた理由は、罪の意識と償いのためだとお父さんは言った。
お父さんは薬物取締法違反で容疑者男性を逮捕しようとした時に、誤ってその人の命を奪ってしまった。
その男性には若い奥さんと、生まれたばかりの赤ちゃんがいて……。
奥さんが泣きながら『絶対に許さない』と言っていたのを、私もワイドショーで見た。
一つの家庭を壊してしまった、お父さん。
そんなお父さんは、自分に家族がいることにも罪悪感を抱いてしまっていた。
「菜乃花、すまない。お父さんのワガママを許してくれ。
これからの人生の全てを、償いに充てたいんだ。
お父さんがあの赤ちゃんから、父親を奪ってしまった……。
お父さんがあの奥さんから、旦那さんを奪ってしまった……。
遺族のふたりがこれからの生活に困ることがないよう、出来る限りのことをしていきたいと思う。
許してくれ……」
お父さんは肩を震わせ、声を出さずに泣いていた。
お父さんの涙を見たのは、初めて……。
私も初めは亡くなってしまった男性と、その奥さんと赤ちゃんに対して、ごめんなさいって思っていた。
辛くて苦しい、罪悪感。
でもお父さんは、私が感じた罪悪感の何百倍、いや、比べ物にならないくらいの苦しみを背負っているんだと気付かされた。


