恥ずかしくて仕方ないけど、それは私だけじゃないみたい。
うつむいていた顔をそろそろと上げて結城くんを見ると、私から目を逸らしている。
その横顔がほんの少しだけ、赤みを帯びているように見えた……。
その後少し話をしてから、また結城くんに自転車に乗せてもらって、自宅マンションまで帰ってきた。
本当はもう少しあの書庫にいたかった。
興味を惹かれる本がたくさんあったし、味のあるソファーに座ってゆっくり読書したかったけど、お母さんに何も言わずに家を飛び出したから早く帰らないと。
それに、マスコミの人たちにマンション前に張り付かれる前に家の中に入りたい。
結城くんに言われて罪悪感から今は解放されているけど、他の人に責めるような言葉を投げかけられたら、弱い私はきっとまた落ち込んでしまう。
そう思って、すぐに帰ってきた。
家を出てから1時間も経っていない。
まだ早朝と言っても良い時間で、新聞配達の人が朝刊を配っている以外、マンション前に人の姿はなかった。


