一歩足を踏み入れると、私の大好きなあの香り。
紙とインクとお日さまの香りが出迎えてくれて、心の傷をそっと癒してくれるようだった。
玄関から、更に奥へ。
普通の家ならリビングにあたる広い部屋に入って、息を飲んだ。
本がいっぱい……。
窓以外の壁一面が本棚になっていた。
天井付近の高い所まで、本がぎっしり詰まっている。
外国語の表題のついた本も目立つ。
何語の本だろう?
フランス語? それともドイツ語?
部屋の中央には日焼けした茶色のソファーセット。
古びているけど手入れが施され、味があって素敵。
座ってみたくなるソファーだった。
部屋を見回して、「わぁ……すごいね……」と呟いていた。
「結城くんが読書家なのは、お祖父さんの影響なの?」
「そうだね。小さい頃に初めてここに連れてきてもらった時、今の君みたいに俺も目を輝かせた記憶がある。
ここは離れで、自宅は隣の建物なんだけど、祖父母とここで暮らすようになってからは、ほとんどの時間をそこのソファーに座って本を読んで過ごした」
「そうなの……」


