「ついたよ」
結城くんから手を離して、私は自転車を降りた。
「ここは?」
「俺の家の離れ。
正確に言うと、祖父の趣味が詰まった建物で、丸々一軒が書庫になっている」
「すごいね……」
緑に囲まれた広い敷地内に建つ、古い洋風のこじんまりとした建物。
外壁は白く塗られた横板張りで、屋根は赤茶の洋風瓦。
窓もドアもアーチ型で、可愛らしい雰囲気。
二階の中央にぽこんと飛び出た三角屋根の時計台が付いていて、文字盤はギリシャ数字、針は動いていなかった。
小さな別荘のような可愛らしい洋館を前にして、ほうっとため息を漏らした。
物語に出てきそうな建物で、さっきの自転車二人乗りとは別のドキドキを味わっていた。
この家の全てが書庫になっていると言うのも、興味が掻き立てられる。
早く中に入ってみたくて、ウズウズした。
結城くんがドアに鍵を差し込む。
カチリと音がして鍵を引き抜き、彼は真鍮の丸いドアノブに手をかけた。
開けたドアの内側に、私の背中をそっと押していざなってくれる。
「あ……図書館の匂いがする……」


