このままでいいと言ってもらえたので、離そうとした腕に力を戻してしがみつき、彼の背中にそっと頬を当てた。
結城くんのダウンボタンシャツからは、洗濯洗剤の爽やかな香りがした。
彼の背中の体温が、私の頬に伝わる。
顔が赤くなっているのを自覚していた。
胸が苦しいくらいにドキドキしてる。
その苦しさは決して不快なものじゃなくて、温かくて心地よくて、嬉しい苦しさなの……。
早朝の涼しくて新鮮な空気が、風となって私の肌を撫で、通り過ぎていく。
流れる町の風景が、いつもよりキラキラして見えた。
結城くんと一緒にいるとドキドキして心臓が忙しくなってしまうけど、その一方でとっても落ち着いて、心が安らぐ気もする。
真逆の気持ちを同時に感じるなんて、不思議だね。
このままずっと、こうしていたいな……。
そんな幸せな願望を抱いた時、自転車は速度を落として脇道に入って行く。
更にどこかの民家の開けっ放しの門の中に入って、手作りっぽいレンガの小道を進み、木々に囲まれた建物の前で停車した。


