警察官のお父さんが仕事中に命に関わる怪我をしたんじゃないかと不安だったけど……違った。
お父さんの怪我は左手小指の骨折と、顔の擦り傷とあちこちの打撲だけで、入院の必要もない軽いもの。
でも、それに喜ぶことができない事情が付いていた。
お父さんはある事件の容疑者男性を逮捕しようとした時、誤ってその人の命を奪ってしまったんだと、重い口調で話してくれた。
『お父さんの不注意で……全ての責任はお父さんに……お父さんが悪かったんだ……』
それから、苦しそうな表情でこうも言われた。
『菜乃花、すまない。
お父さんはしばらく家に帰れない。
お母さんのこと、頼むな……』
寒いくらいにクーラーの効いたタクシーの中、車窓を眺めているお母さんの横顔は、泣きすぎて瞼が赤く腫れ上がり、目がうつろだった。
胸がズキズキと、痛い。
お母さんのこと頼むなって言われたけど、何て声を掛けていいのかもわからないよ……。


