見える範囲の廊下には、春町くん達の姿はなかった。
キョロキョロしながら歩いていると、前方の水飲み場の方から「キャハハ」と明るく笑う、由希奈ちゃんの声がした。
あ、水飲み場で待っていてくれたんだ……。
うちの学校の水飲み場は、廊下に対して直角に、奥に細長く伸びている造りになっている。
私の歩いている位置からは廊下の壁が邪魔をして、まだ春町くん達の姿が見えない。
歩く速度を速めた。
近づくにつれ銀色の流し台が見えてきて、続いて紺野くんの姿が見えた。
紺野くんは流し台の縁に腰掛けて片手でスマホを操り、もう片手は衿元のネックレスをいじっていた。
まだ姿が見えてこない他の3人は、声だけがはっきり聞こえていた。
「楽人、今の超よかった」
「でしょ? 美緒、もう一回する?」
「え〜ズルーイ。あたしももう一回!」
早足で歩く私。
廊下の壁が途切れて、水飲み場の奥までが視界に入る。
「遅くなっ……」
遅くなってごめんねと言おうとしたけど、途中までしか言えなかった。
水飲み場の一歩手前で足が止まり、ビックリして目を見開いた。
だって、美緒ちゃんと春町くんがキスしてる……。


