明日はきっと晴れるから




結城くんは机上の勉強道具を鞄にしまい、立ち上がる。


困り顔のまま見上げると、彼の形の良い唇が音を出さずに動いていた。


“ 菜乃花、またね”


あ……また……。

いつもは私の事を“ 宗多さん” と呼ぶ彼が、声には出さずとも今、“ 菜乃花” と言った。


忘れてしまった過去の物語で、結城くんは私のことをそう呼んでいたんだね。


菜乃花……。

菜乃花、またね……。

ん? あれ?


なぜか、その言葉に引っかかる。

頭の中にその言葉が、文字となって現れていた。


なんだろう。すごく気になる。


思わず目を閉じて記憶の中を探ってみると、子供の字で【菜乃花、またね】と書かれたメモ用紙が浮かび上がってきた。


誰かが私に宛てて書いたメッセージ。


誰かって、誰……?

もしかして、小さな頃の結城くんなの?

どんな場面で私は、このメッセージを受け取ったの?



必死に思い出そうとしても、メモ用紙の他は何も浮かんでこなかった。


カタンと音がしてハッと目を開けると、同じテーブルの私の斜め前に座っている生徒が帰ろうと片付けている最中。



結城くんの姿はもう、図書室から消えていたーーーー。