子供の頃から慣れ親しんできた本に囲まれた空間で、結城くんと並び、静かにお互いの教科書に集中する。
なんだか、ホッとする。
最近、焦ったり迷ったり困ったりで心が忙しかったけど、図書室にいるととても落ち着く。
勉強も自分の部屋でするより、はかどる気がする。
明日からも、放課後は図書室で勉強して帰ろうかな……。
どれくらい時間が経ったのだろう。
ふと気づくと、窓辺の白いカーテンが微かに赤みを帯びているように見えた。
集中力の途切れた私が視線を窓辺から隣に移すと、結城くんはまだ黙々と勉強中。
変わらず教科書とノートの間で視線を往復させ、時々辞書を引き、ノートにシャープペンシルを走らせていた。
本当にすごい集中力だね。
まるで私が本の世界にどっぷり浸っている時みたい……。
結城くんの黒い前髪は、少し長めで瞳に掛かりそうになっていた。
時折うっとおしそうに片手で掻き上げるけど、すぐにサラサラと下りてきてしまう。
その様子をジッと見ていた私は、ヘアピンならあるけど……と思ってしまった。
それと同時に、男の子にヘアピンなんて……と、自分がおかしなことを考えたことにも気づく。


