静かに歩いて、結城くんの隣に行った。
幸い彼の隣は空席で、テーブルに鞄を置いてそこに着席した。
結城くんは、私に気づかない。
私の教科書とは違う特進クラス用の分厚い英語の教科書を開き、ノートに綺麗な文字で流れるようにサラサラと英文を書いていた。
それを見て、すぐに聞き出そうと思っていた気持ちがしぼんでしまった。
隣に座っても気づかないなんて、すごい集中力。
私もそれなりに勉強を頑張っているつもりだけど、きっと結城くんは私の何倍も勉強しているんだろうな……。
特進クラスだもんね。
すごく大変そう……。
結城くんの勉強が一段落してから話しかけようと思い直し、私も鞄の中から教科書とノートを出してテスト勉強を始めた。
図書室はクーラーが効いていて、涼しくて気持ちがいい。
白いカーテンが日差しを遮り、柔らかな光を届けてくれる。
それから、この香り。
図書室や図書館の空気は、どこも似ている。
本がたくさんある場所に共通するこの匂い。
紙とインクとお日さまみたいな、小さな頃から私が大好きな香り……。


